パンクの精神

パンクについて、音楽について

スターリンの衝撃

拡声器のけたたましい音がホール中に響き渡り、奇抜な格好をした四人の若者が、聴衆の方を振り返ることもなく、静かに演奏を始める。
拡声器を放り投げた男は、何か液体のようなものや肉のようなものを、聴衆の方へ向かって無造作に撒き散らしている。

「ザ・スターリン
80年代に衝撃的なライブパフォーマンスで脚光を浴びた伝説的なバンドだが、その前衛的な音楽性は今も色褪せることはない。

“パンク”というものが、音楽としても、姿勢としても、初期衝動を忘れ、次第に形式的な「制度」と化していく中で、彼らは最後まで抵抗し続けていた。
“聴衆”というものに、“社会”というものに、そして何より“己”というものに。

もともとパンクは、既存の秩序に対する“反抗”から生まれたものだった。
当時それは、音楽的には“複雑な音楽形式に対する反抗”という形で、姿勢としては“盲目的な規範や道徳に対する反抗”という形で表われていた。
しかし、その後の大半のバンドはそれを「制度」にしてしまった。
いつのまにかパンクは、いつの時代にも、ただの“単純な音楽”か“ファッションの一形態”になってしまった。

スターリンの演奏の多くは、一見音楽的には単純だが、実は非常に意識的に練られたものだ。シンプルなコードの組み合わせを独自のやり方で“自分達の音楽”へと昇華させている。
「ロマンチスト」はスターリンの代表曲の一つであると同時に、彼らの最も原初的な衝動を体現した曲だと思う。これほどむき出しでストレートな曲は、他にあまりないかもしれない。
ワルシャワの幻想」はスターリンの曲の中でも特に実験的な一曲と言えるだろう。
遠藤ミチロウが鳴らす拡声器のけたたましい音で始まる印象的な一曲だ。 
この曲は、いわゆる“1コード”の曲で、ルート中心のベースラインと8ビートのドラミングを固定し、その上でTAMが奔放にギターを弾き続けるという構図になっている。また、“メシ喰わせろ”、“働け”といったシュプレヒコールにも似たミチロウの煽りはこの曲に強烈な印象を与えている。
個人的には、拡声器⇒ドラム⇒ベース⇒ギターと順に入っていくやり方も気に入っている。
「虫」は、スターリンが表現する暗闇を露呈した一曲だ。
ゆったりとした不気味な半音移動が曲全体を貫き、抑制的、厭世的な感を覚えさせる。あるライナーノーツには、「虫」=“無視”=“ディスコミュニケーション”を想起させるというようなことが書いてあった。

遠藤ミチロウの存在感、シンタロウの骨太なベースライン、タムの天才的なギター、乾純の大味なドラミング。

自分にとって、スターリンはすべてが眩しい存在だ。
到底言葉では言い尽くすことのできないバンドではあるが、自分にとって、スターリンは常に“初期衝動”を思い起こさせてくれるバンドであり、同時に最も尊敬するバンドであり続けている。

http://youtu.be/4t8FMGFMM5g
http://youtu.be/AR6d90KuA98
http://youtu.be/3WyS4pE2YUk
http://youtu.be/HbSSa2f9Lh8
http://youtu.be/fahm9vT34PM

STOP JAP NAKED

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虫(紙)

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